自分や好きな人の匂いをかぐと落ち着くのはなぜ?

いきなり下品な話になってしまいますが、おならは他人のものは臭くて不快になってしまいますが、なぜか自分のものは臭いのにかぐと落ち着くという人は多いのではないでしょうか。自分の唾液が付いた布団などはお世辞にも良い臭いとは言えませんが、なぜかかいでいると落ち着いてきますよね。また、好きな人の匂いをかいでいると、心が安らかになってくるという経験を持っている人も多いでしょう。なぜ自分や好きな人の匂いをかぐと落ち着くのか、そのメカニズムについて説明していきましょう。

人間の体にも野生時代の名残は存在している!

野生動物とはかけ離れた環境に住んでいる人間ですが、実は野生時代の名残というものが存在しているのです。その典型的な例が、自律神経の働きです。自律神経のうち交感神経が活発になると、男性ホルモンの分泌量が増えたり、末梢血管が収縮したりします。これは、体を「戦闘モード」にするという、野性時代の名残だと言えます。

野生動物の場合、オス同士やメス同士の戦いは普通にあることで、このときに活発になるのが交感神経なのです。男性ホルモンの分泌量が増えるのは、気持ちを前向きにすることで戦闘態勢に入りやすくするためです。末梢血管を収縮させるのは、戦闘によってけがをしたときに、少しでも出血量を減らすようにするためです。まさに「野生時代の名残」というわけで、かつては人間も野生動物と同じような環境にいたことを証明していると言っていいでしょう。

そして、自分の匂いや好きな人の匂いをかぐと落ち着くのも、この野生時代の名残なのです。

自分の匂いをかぐと縄張りの中にいる気分になる

犬を散歩に連れて行くと、道端におしっこをすることがありますが、これはマーキングによって自分の縄張りであることを示すためです。人間にも同じように、自分の匂いによって「縄張り」を示すという本能が残っているのです。

自分の匂いは、そこが自分の「縄張り」であることを示しているのです。自分の匂いをかぐと、縄張りの中にいるということが確認できるため、外的に襲われる可能性が低い、安心できる状態だと体が判断してくれるというわけです。これが落ち着いた気分につながってくれるというわけです。

よく「ぬいぐるみと一緒にいると安心できる」という人がいますが、これはぬいぐるみに自分の匂いが付着しているためです。ぬいぐるみと長い間一緒にいると愛着がわくのも、自分の匂いが付着していくにつれて安心感が出てくるためだと言えそうです。また、自宅に帰ると安心できるのも、この仕組みによるものです。自分の匂いや親兄弟の匂いが家に染み付いているため「縄張りの中にいる」と感知し、落ち着いた状態になってくれるというわけです。

これとは逆に、他人の家に行くと落ち着かないという人もいます。これは、自分とは違う匂いをかぐことで、縄張りの外に出ているということが確認できるためです。言い方は悪いですが「敵の縄張り」の中にいると、安心できるわけがありませんよね。

好きな人の匂いは「血縁的に遠い」ことを表している

では、なぜ好きな人の匂いをかぐと落ち着くのでしょうか。実はこれ、順番が逆なのです。落ち着く匂いを持っている人を好きになっているのです。では、落ち着く匂いと落ち着かない匂いの違いは、なぜ生じるのでしょうか。

野生動物は匂いによって近親交配になることを避けています。血縁的に遠い個体は好きになりやすい匂いがするようになっていますし、ある程度血縁的に近い個体は好きになりにくい匂いになっています。親兄弟のように極めて血縁的に近いと、匂いが似ているため気づきにくくなるといった具合です。この結果、血縁が近い個体と交配することがなくなり、種の保存につながってくれるというわけです。

同じことが、人間についても言えるのです。血縁的に遠い相手の匂いをかいでいると落ち着くので、好きになりやすいというわけです。血縁的に近いと匂いをかいでも落ち着くことができなかったり、そもそもほとんど匂いを感じることができなかったりするので、好きになりにくいのです。

このように書いていくと「人間の行動も基本的には野生動物と変わらないんじゃないの?」と思う人もいるでしょう。全くもってそのとおりで、住んでいる環境が自然界の中か、自然からかけ離れた都市部かという程度の差しかないのです。

まとめ-文明化しても人間が動物であることに変わりはない

自然環境からかけ離れた都市部に住んでいると、人間に「野生の本能」が残っているなんて信じられないと思うでしょう。ただ、このように人間の体の仕組みを調べていくと、野性時代の名残が予想以上に多いことが分かってくるのです。いくら文明化しようとも、人間もさまざまな動物の一種であることに変わりはないのです。自分や好きな人の匂いをかぐと落ち着くという心理は、そのことを見事に証明していると言っても過言ではないかもしれません。