体臭対策や予防は大人のエチケット!脱洗いすぎで臭いをブロック!

体臭対策を意識する人にとって毎日の入浴は重要です。入浴は体臭の元となる原因菌や汚れ自体を洗い流すだけでなくリラックス効果、疲労回復、血行促進など様々な面から複合的に体臭をおさえてくれます。ただし心配されるのが「洗いすぎ」。清潔志向がどんどんエスカレートしている昨今、私たちの体の洗い方に警鐘が鳴らされています。きちんと入浴しているにも関わらず一向に体臭が改善されないという人は、もしかしたら入浴の仕方が間違っているのかもしれません。

洗いすぎってどのくらい?洗いすぎると体臭はどうなる?

1日の終わりに疲れた体を湯船に沈める時の、あの解放感!体が隅々まで温まり、コリがほぐれ、気持ちも体もリラックスできます。香り高いシャンプーやボディソープで全身を洗いあげる爽快感もまた格別です。けれどもこの時皮膚表面では大きな変化が起きています。そしてこの変化こそ、洗いすぎが体臭に良くないとされる根拠です。

そもそも洗いすぎというのは、

  • 1日に複数回入浴あるいはシャワーを浴びている
  • 毎日入浴し、その都度熱いお湯に長時間浸かっている
  • 毎日入浴し、その都度シャンプーやボディソープで全身を洗っている
  • 毎日入浴し、その都度タオルやスポンジでゴシゴシと全身を洗っている

という状態です。これらによって皮膚には次のような現象が起こります。

皮脂膜は肌のバリア機能の一部 ~大切な皮脂膜が流されてしまう~

皮膚の一番外側は厚み0.02mmの角質層です。角質層は水分をたくわえる角質細胞とその隙間をぎっしり埋めるセラミドなどの細胞間脂質から成り、さらにその最表面を皮脂膜がおおっています。皮脂は臭いやベタつきの元になるため嫌われがちですが、じつは皮脂が作る体表面の油膜は体内からの水分の蒸発を防ぐとともに、紫外線やアレルゲンなどの外部刺激から体を守ってくれています。

食器洗いや衣類の洗濯で経験があると思いますが、油汚れは冷水で洗うより温水で洗った方がよく落ちます。皮脂の成分、スクワレンやトリグリセリドも体内から出る脂質ですから、お湯に触れると皮膚から溶け出し流れてしまいます。つまり熱いお湯に長々と浸かり、石鹸とタオルでゴシゴシ洗うと、肌に必要な油分までもが残らず流れ、大切なバリア機能が損なわれてしまうのです。「洗いすぎ」が続くと皮脂膜は回復する暇がありません。むき出しになった角質層からは水分が蒸散し続けます。すると慌てた皮脂腺が皮脂の分泌量を増やすので、洗えば洗うほど肌はオイリーになり、体臭もすぐに復活します。

皮膚常在菌が流される ~皮膚フローラがバランスを崩す~

皮膚表面には腸内と同じように多くの常在菌が暮らしています。そして腸内と同じように善玉菌と悪玉菌と日和見菌がバランスをとりながら皮膚フローラと呼ばれる生態系を形成しています。熱いお湯やゴシゴシ洗いは善玉・悪玉の区別なく常在菌を一気に洗い流してしまいます。特に洗浄剤で全身をくまなく洗うと常在菌はほとんど生き残ることができません。残った菌が元通りの状態になるには数時間から長くて数日かかります。「洗いすぎ」は皮膚フローラに壊滅的打撃を与えます。そして回復の過程で悪玉菌の数が善玉菌をしのいでしまうと、ライバルのいない悪玉菌は活発に活動し、体臭の元となる悪臭成分をどんどん生成します。

肌のバリア機能を維持するための弱酸性環境が乱される

善玉菌は皮脂に含まれるトリグリセリドなどの成分を分解して脂肪酸を作ります。脂肪酸は皮膚表面のpHを弱酸性に保つ働きをします。弱酸性は善玉菌が好む生育環境であると同時に、肌が弱酸性に保たれていることで、中性や弱アルカリ性を好む悪玉菌の侵入と増殖を防ぐ効果もあります。

しかしボディソープなどの洗浄剤はほとんどがアルカリ性です。もちろん汗や皮脂など酸性の汚れを中和して落としてくれるわけですが、使うたびに常在菌が除去され、しかも肌のpHをアルカリ性にかたむけることになります。「洗いすぎ」により肌が中性や弱アルカリ性になると、正常な弱酸性にもどるまでの間にアルカリ環境を好む悪玉菌が増殖し、皮膚表面で臭い成分を生み体臭を発生させます。

体の汚れはお湯だけで落ちる。脱洗浄剤のススメ

要するに、体臭を予防あるいは改善したいあまりに「洗いすぎ」を続けると、かえって水分不足のオイリー肌で悪玉菌を元気にし、善玉菌の生育環境を乱してしまうというわけです。これが洗えば洗うほど体臭はひどくなると言われるゆえんです。

皮膚表面の汚れのほとんどはお湯だけで洗い流せます。一時期話題になった洗浄剤不使用の「湯シャン」「水洗顔」「タモリ式入浴法」などは、無謀に見えてじつは理にかなっているのです。洗浄剤を使わずぬるま湯と手だけでやさしく体を流す方法なら、皮脂膜や常在菌や肌のpHへのダメージを最小限におさえつつ十分に汚れを落とすことができます。
とは言え皮脂や汗の分泌量、あるいは常在菌の数や種類には個人差があります。臭いの気になる部分や皮脂量の多い部分にはどうしても洗浄剤がほしい人もいるでしょう。また整髪料や女性のメークも素洗いでは肌に残るダメージが心配です。洗いすぎは禁物ですが無理に我慢すればストレスになってしまいますので、極端になりすぎず、自分の肌と体臭の状態を見ながら少しずつ加減していきましょう。いずれにせよ、熱いお湯とゴシゴシ洗いは厳禁です。

トリクロサンが使用禁止に。認識され始めた殺菌・抗菌成分の危険

トリクロサンという殺菌・抗菌成分があります。主に薬用石鹸などの衛生用品に配合されており、殺菌・抗菌効果を売りにした商品の9割以上がこうした成分を使用しています。

ところが2015年6月にEUが、翌2016年9月にはアメリカが、トリクロサンをはじめとする複数の殺菌・抗菌成分を名指しして、それらが使われた石鹸などの販売禁止を決定しました。理由は「確たる殺菌・抗菌効果が実証できないこと」、そして「長期間連用した場合に人体などへの悪影響が懸念されること」。これを受けて日本の厚生労働省もトリクロサン、トリクロカルバンなどアメリカが禁止した19種類の成分について、違う成分に切り替えるよう関係業界に通達を出しました。
なぜ40年以上も使われてきたメジャーな殺菌・抗菌成分が今になって突然使用禁止になったのでしょう?それらは果たしてどのような危険をはらんでいるのでしょう?

あげればきりがない、殺菌・抗菌成分の恐ろしさ

トリクロサンは皮膚からの吸収率が非常に高く、血液や尿などの体液はもちろん、母乳にまで混入することがわかっています。ブドウ球菌などに対し高い殺菌力を発揮しますが、早くから腸内フローラを乱す作用や、発がん性、胎児への影響が疑われていました。動物実験では環境ホルモンとしての内分泌攪乱作用や筋力の低下が報告されています。さらには使用後に下水へ流されたトリクロサンが処理施設で処理しきれずに河川へ流れこむことによる環境破壊や水生生物への影響も心配されています。
今回、国からトリクロサンを使うなと言われた各メーカーは、塩化ベンザルコニウムやイソプロピルメチルフェノールを代替品として採用し始めましたが、それらの物質とて確たる安全性が証明された成分ではありません。

アトピー性皮膚炎の急増。大人のアトピーが増えている
皮膚表面に生息する悪玉菌の内、アトピー性皮膚炎の発生や悪化に関与しているのが黄色ブドウ球菌です。この菌は過剰な洗浄などで皮膚のバリア機能が壊れ、アルカリ性に傾いた時に勢いよく繁殖します。
一方アトピー性皮膚炎の罹患者数は年々増加しています。統計によれば平成26年度の総罹患者数は国内でおよそ45万人。30年前のほぼ倍です。しかもむかしはアトピーと言えば子どもの病気と思われていたのが、近年は成人しても治らない人や、逆に成人してから発症する「成人アトピー」が増えており、特に30代から50代の発症率は増加率が顕著です。
30代から50代と言えば、ちょうどミドル脂臭や加齢臭など体臭の変化が気になり始める年代です。臭いを気にするあまり強い成分の入った洗浄剤で頻繁に体を洗っていることが無関係とは言いきれません。
抗生物質が効かない!広がりゆく薬剤耐性菌の恐怖

耐性菌というのは文字通り抗菌薬に対して耐性を持つ菌のことです。耐性菌の多くはバイオフィルムというネバネバした膜を作って気に入った場所にしっかりとへばりつきます。そしてその膜をバリアにして抗菌薬から身を守り、しぶとく増殖していきます。バイオフィルムの中では細胞分裂のスピードが落ちるため、細胞分裂を阻害することで菌の増殖を防ぐ抗菌薬が効きません。やがて耐性菌は威力を増して、重篤な感染症を引き起こします。
細菌などの微生物が作り出す抗菌薬を、特に「抗生物質」と呼びます。これまで抗生物質は感染症の切り札でした。けれどもその切り札が効かない耐性菌が次々と現われ世界的な問題になっています。先ごろ日本で開催された伊勢志摩サミットでもこの問題は大きく取り上げられました。EUやアメリカでは耐性菌による感染症で毎年2万人以上が命を落とし、日本国内でも犠牲者が出始めています。殺菌・抗菌成分の入った商品は、有害な成分が皮膚から体内に吸収され、菌の耐性獲得を助長する危険が指摘されています。

それでも体臭をなくしたい?引き換えに失う健康と免疫力

殺菌・抗菌剤入りの洗浄剤は体臭の原因菌だけをスポットで殺菌するわけではなく、体にとって有益な菌にもダメージを与えます。頻繁な入浴は清潔な行為に見えて、じつは悪玉菌もろとも、体を守ってくれている大切な菌にまで攻撃を加える行為です。そして必要以上に常在菌を迫害し続けると、やがて菌全般に対する免疫・抵抗力が落ち、ささいな菌からのちょっとした攻撃にも耐えられない体質になってしまいます。

注目すべきはEUやアメリカがトリクロサンなどを禁止した理由の1つとして「感染症などに対し通常の石鹸より効くというエビデンスは見つからなかった」と述べている点です。つまりわざわざハイリスクな商品を使っても、効果はふつうの石鹸と変わらないということです。前述のように、通常の入浴ですら常在菌の多くが失われてしまいます。体臭を気にするあまり、安全性が確立されてもいない殺菌・抗菌剤入りの洗浄剤を無意味に連用していると、相手はなんといっても発がん性まで指摘されている成分です。将来的に何が起こるか、まだ誰にもわかりません。自分の体臭対策に行き過ぎた部分がないか、今一度冷静に考えるべき時代が来ています。

まとめ

近年の殺菌・抗菌ブームはとどまるところを知りません。手に取る商品には「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」の表示がひしめいています。けれども私たちは菌と共存せずに生きていくことはできません。菌を嫌悪しすぎれば、思わぬしっぺ返しをくらう危険があります。

殺菌・抗菌剤の入った洗浄剤はこれからも生産されていくでしょう。欧米で禁止された19種類の成分だけを排除したところで、同じくらい得体の知れない代替品がいくらでもあるからです。買う買わないは消費者の判断です。ただ、タンニンやカテキンなど天然由来の殺菌・抗菌成分もたくさん存在します。表示をよく見て怪しげな化学成分が配合された商品は買わないようにしてみませんか?「洗いすぎ」の方もひかえてみましょう。入浴やシャワーは1日おきか2日おき、特に気になる部分だけに安全な洗浄剤を少量使い、熱いお湯やゴシゴシ洗いはしばらく我慢してみましょう。その上で自分の体臭や肌の変化をしっかり観察してみましょう。最初はものたりない気がしても、「この程度で十分かな」という自分なりの妥協点がきっと見えてくるはずです。