体臭にはどんな種類があるの? それぞれの原因と対策

誰にでも多少の体臭はあります。ふだんは全く気にならなくても、毎日使う寝具やタオルに、ふっと自分や家族のにおいを感じたことはあるでしょう。生きていれば何らかのにおいが発生するのは当たり前。よほど強烈でないかぎり気にすることはありません。けれども特定のにおいが明らかにきつい場合は、周囲に迷惑をかけないためにも対策が必要です。

体臭と言えばこれ。みんなが気にする汗のにおい

若い世代を中心に男女を問わずもっとも広く気にされているのが「汗臭」ではないでしょうか。汗そのものはほぼ無臭ですが、汗はにおいの原因を作ります。そして体調や体質によっては汗そのものがにおいます。

皮膚常在菌の存在 ~菌がにおいを作る~

皮膚表面には腸内と同じように善玉菌や悪玉菌、つまり常在菌が存在します。そして一部の常在菌は汗に含まれるミネラルや老廃物を分解・代謝して生きています。その際、代謝の副産物としてアンモニア、酢酸、イソ吉草酸などのにおい成分が発生します。これらが皮膚表面から揮発するのが一般的な汗臭です。

では常在菌を退治すれば汗臭はなくなるのでしょうか?

そう簡単にはいきません。全身に分布する常在菌の数は何百兆個にのぼると言われ、中には皮膚の健康を守る上で絶対必要な菌もいます。ワキガなどの特例をのぞけば、汗臭には原因菌の除菌よりも、まず菌に汗を分解させない工夫をするのが王道です。

じつは分泌された汗が常在菌に分解されてにおいの元が生まれるまでには1時間ほどかかります。つまりその間に汗をふいてしまえば、においが発生する暇はありません。ただ、乾いたタオルやハンカチで片っぱしから吸い取っていると、皮膚から乾燥警報が出て余計に汗が出ることも。制汗シートなどで潤いを守りながらやさしく汚れをふきとるか、ふいたあとでしっかり保湿をするなど乾燥に気をつけましょう。盲点なのは夏の冷房。冷気のおかげで汗が引いたとつい錯覚してしまいますが、じつは汚れは肌に残っていて常在菌を増やします。ですから一度汗をかいたら、たとえ汗が引いた、乾いたと思われても、油断せずにきちんとふきとる習慣をつけましょう。ワキなど特定の部位のにおいが気になる場合は、制汗剤でその部分の汗をスポットでおさえるといいでしょう。

良い汗と悪い汗 ~じょうずに汗をかこう~

「良い汗」「悪い汗」という言い方を聞いたことはありませんか?

人間は恒温動物です。外気温が少しくらい変化しても体温を一定に保つことができます。これを可能にする仕組みのひとつが汗腺からの発汗です。暑ければ汗をかくことで体温をコントロールするわけです。

けれどもこれだけエアコンが普及し、運動からも遠ざかった現代人の汗のかき方には異変が起きています。常時機能している汗腺(能動汗腺と言います)が減り、発汗機能の低下した人が増えているのです。

汗は血液から作られています。まず汗腺の「分泌部」と呼ばれる部分で血液が血漿という液体に変えられます。血漿は「導管部」という皮膚表面へと続く通路を通過する間にろ過されて、体に必要なミネラルなどを再回収され、純粋な水と言ってもいいくらいの状態になって皮膚表面に出ていきます。これが「良い汗」です。良い汗はにおいませんし、常在菌のエサとなる養分もほとんど含みません。

しかし発汗機能が低下した人では、この工程がうまくいきません。分泌された汗には本来回収されるはずだったミネラルや電解質が含まれたままです。こうした汗は濃度が濃く、ベトついて、においもあります。これが「悪い汗」です。悪い汗には常在菌のよろこぶ養分がいっぱい。ただでさえにおうのに、菌の代謝まで活発にさせて汗臭をひどくしてしまいます。

良い汗をかこうと思ったら、汗腺を鍛えて、衰えた発汗機能を回復させなければなりません。これを「汗腺トレーニング」と言います。具体的には半身浴、足湯、有酸素運動などの継続により、体に正しい汗のかき方を思い出させてあげること。体が良い汗をかけるようになれば、皮膚表面に排出される常在菌のエサが減り、におい成分の発生をおさえて汗臭を軽減できます。

隠れた病気 ~体の不調が生むにおい~

この他、ストレスや食べたものの影響でも汗はにおいを帯びますが、内臓などの不調が原因でにおうこともあります。この場合はかなりはっきりと汗くささ以外のにおいがします。代表的なのが次の3つです。

  • 糖尿病

摂取した食べ物に含まれる糖質は消化活動を経てブドウ糖に変わります。それをインスリンというホルモンが全身の細胞に分配します。糖尿病を発症するとインスリンがうまく機能せずブドウ糖の分配がとどこおって、体がエネルギー不足におちいります。すると肝臓がブドウ糖の代替品として「ケトン体」という物質を生産し始めます。ケトン体には甘酸っぱいにおいがあるため、糖尿病の症状のひとつとして汗から甘酸っぱいにおいがすることがあります。汗臭の原因が糖尿病だとわかったら、食事制限と適度な運動で血液中のブドウ糖を消費して、病状の改善につとめなければいけません。

  • 胃腸の弱り

消化機能が低下すると、消化しきれなかった食物が腸で腐敗し悪臭を放ちます。悪臭は血液にのって全身に運ばれ、汗に混じります。すると汗から硫黄のような腐敗臭がするようになります。この手のにおいの元になるのは主に動物性たんぱく質です。肉や卵にかたよらず、野菜・海藻類をバランスよく摂取して、弱った胃腸の回復に努めましょう。

  • 肝機能の低下

肝臓にはアンモニアを分解する役割があります。たんぱく質などが分解されるとアンモニアが発生し、肝臓でオルニチンという物質とむすびついて無害な尿素に変わります。けれども肝機能が低下するとこの作業がとどこおり、あまったアンモニアが血中に流出して汗からアンモニア臭がするようになります。オルニチンの豊富なシジミやキノコ類を摂取して肝臓の働きを助けてあげましょう。

汗臭はもっともポピュラーな体臭で、多くの人を悩ませているかわり、もっとも対処法が明確なにおいです。こまめに汗をふいて悪臭の元を断ち、いい汗をかいて常在菌のエサを減らし、原因となる病気があれば治療と改善に努めることでコントロールが可能です。

 年齢には逆らえない?加齢臭の予防法

加齢臭を自覚したり指摘されたりするのは何とも言えないショックです。老眼と並び「老いのバロメーター」とみなされている加齢臭。でもあきらめてはいけません。改善の道は残されています。

加齢臭の原因は? ~においの元となる成分~

汗臭の原因は「汗」すなわち汗腺からの分泌物でしたが、加齢臭の原因は「皮脂」すなわち皮脂腺からの分泌物です。そのため皮脂腺が多く分布する頭部、胸元、背中などににおいが発生します。

50代、60代になると、体内の水分量や保水力が低下して肌が乾燥し始めます。そこで皮膚は乾燥を防ぐために皮脂の分泌量を増やします。こうして中高年の肌はオイリーな感じになっていきます。一方、このオイリーな中高年の皮脂には「9-ヘキサデセン酸」と呼ばれる、若い世代からはあまり検出されない不飽和脂肪酸が含まれています。この脂肪酸が皮膚表面に出て皮膚常在菌に分解されると「ノネナール」というアルデヒド(におい成分)が発生します。これが加齢臭の犯人です。つまり加齢臭は、中高年特有の成分を含んだ皮脂が増えることで発生するのです。

さらにノネナールには菌分解以外の発生ルートがあります。活性酸素による「酸化」です。年齢を経るにつれて体内では活性酸素が増加します。活性酸素とは呼吸によって取り込まれた酸素が化学反応により変質したもので、体内の細胞を酸化させる(サビさせる)老化因子のひとつです。活性酸素は、若かりし頃より基礎代謝が落ち脂肪がたまりやすくなった50代、60代の体内で、中性脂肪やコレステロールなどの脂質を酸化させ、「過酸化脂質」を生み出します。過酸化脂質は前述の9-ヘキサデセン酸の分解を促進し、結果的にノネナールの生成量を増やします。つまり加齢臭の原因成分ノネナールは、皮脂量の増加と活性酸素の増加という、加齢に伴う体の変化の産物というわけです。

ここで「トシのせいか…」とあきらめてはいけません。というより、トシのせいだけにしてしまってはいけません。加齢臭の発生には、もうひとつ年齢と同じくらい重要なファクターがあります。ずばり、乱れた生活習慣が引き起こす「生活習慣病」です。

生活習慣を見直そう ~加齢臭の裏にひそむ生活習慣病~

生活習慣病は体脂肪の増加、悪玉コレステロールの増加、血圧の上昇など、さまざまな形で私たちの健康をむしばみます。そしてじつは加齢臭とも密接な関わりがあります。たとえば脂質の多い食事が続けば、健康面では体脂肪が増え、体臭面では余分な脂肪分が皮膚からしみ出し、においの元となる皮脂の分泌量が増えます。動物性たんぱく質にかたよった食事が続けば、健康面では血中コレステロールの増加で血液がドロドロになり、体臭面では皮脂腺が刺激されてやはり皮脂の分泌量が増えます。健康状態はどんどん悪くなり、皮脂が原因となるノネナールもどんどん生成されるという負のループ。すなわち生活習慣病を誘発・放置する生活をしていれば、連動して加齢臭も悪化するのです。どちらも予防・改善には、バランスのとれた食生活と適度な運動が不可欠です。生活習慣病への対策はそのまま加齢臭対策につながります。

加齢臭を意識するなら、もう一歩進めて抗酸化成分が豊富な食材を摂りましょう。抗酸化成分とは酸化されやすい成分のこと。優先的に活性酸素とむすびつくので、活性酸素による酸化作用から体内の細胞を守る作用があります。ビタミンならビタミンCやビタミンE、カロテノイドならβカロテンやリコピンやカプサンチン、他にもカテキン、大豆イソフラボンといったポリフェノールも抗酸化成分です。これらを摂取することで、9-ヘキサデセン酸の分解を促進する過酸化脂質の発生に歯止めがかかり、ノネナールの生成量を減らす効果があります。

加齢臭に効く入浴法 ~洗いすぎは逆効果~

加齢臭を軽減したいなら毎日の入浴も大切です。入浴はシャワーだけですませず、しっかり湯船につかりましょう。皮膚表面にこびりついた皮脂や角質やアカをふやかすとともに、常在菌のエサとなる老廃物を汗で内側から押し流し、それを手やスポンジでソフトに洗い流すのが正しい入浴法です。

においが気になるからと言って目の粗いタオルでゴシゴシこすったり洗浄力の強い石鹸を使い続けたりするのは逆効果です。洗いすぎは皮膚表面を傷つけ、皮脂膜をはぎ取り、肌のバリア機能を奪います。むき出しになった肌からは水分が蒸発しやすくなって、水分とともににおい成分が蒸散するようになります。しかも肌を守ろうとして皮脂の分泌量も増加してしまいます。力技では、においを消そうとすればするほど加齢臭の原因である皮脂の分泌が亢進されてしまうのです。むやみにスクラブやピーリング商品を使うのも、同じ理由でご法度です。

「オヤジ臭」という不名誉な別名も持っている加齢臭。ですが原因は年齢だけでなく、長年積み重ねてきた生活習慣や不摂生の産物でもあることを肝に命じておきましょう。そういう意味で加齢臭は、「いつまでも若くはないのだからもう少し健康に気をくばって」という体からのメッセージかもしれません。

新たな脅威、ミドル脂臭

比較的若い世代に悩みの多い「汗臭」と、50代以降が気にしてやまない「加齢臭」。この2つのにおいはすでに広く浸透・定着しましたが、2013年、これらに続く第3の体臭の存在を大手化粧品会社マンダムが発表しました。それが「ミドル脂臭」です。

ミドルとは「中間」の意味。この場合は青年でもなく老人でもない働き盛りの年代をさします。前述の2つのにおいと同じく皮膚常在菌が関与していますが、原因となるにおい成分は酢酸でもアンモニアでもノネナールでもありません。

ミドル脂臭って何? ~枕がにおったら要注意~

ミドル脂臭の発生部位は後頭部からうなじにかけて。そのため「最初に気づいたのは枕カバーのにおいの変化」という人も多いようです。発生のメカニズムは次のようになっています。

まず常在菌が頭皮の皮脂を分解し、頭のにおいの原因となる「中鎖脂肪酸」を排出します。そのかたわらでスタフィロコッカス属の黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌が頭皮の汗に含まれる乳酸を代謝して「ジアセチル」というにおい成分を排出します。中鎖脂肪酸とジアセチル、2つの悪臭が混じりあって発生するのが、強烈な悪臭、ミドル脂臭です。

ジアセチル自体は特に目新しい成分ではありません。たとえば日本酒の醸造に失敗し、酵母や乳酸菌が異常発生した時のにおいがジアセチルのしわざとして古くから知られています。日本酒の世界では「つわり香」と呼ばれ、そのこころは、「つわり中の女性が嗅ぐとたちまちオエッとなるにおい」とか。そんなにおいが自分の体から発生していたらたまりませんね。

ミドル脂臭のふせぎ方 ~ノーマークだった後頭部を徹底的に意識する!~

原因成分のジアセチルは主に30代から40代の男性の頭皮から発生します。皮脂は男性ホルモンの影響を受けるため、男性はもともと女性より皮脂の分泌量が多めです。加えてミドル世代の男性の頭皮の皮脂は、若い頃よりトリグリセリドという中性脂肪の割合が増え、粘土の強い状態になっています。それゆえ洗っても皮脂汚れが落ちにくく、におい成分が長く頭皮にとどまり、雑菌も繁殖しやすいのです。

該当年齢に入ったら、自分の後頭部を触った指でにおいを確認する癖をつけましょう。枕のにおいも毎日チェックし、枕カバーはこまめに替えましょう。そしてにおいが気になるようならミドル脂臭を疑いましょう。シャンプーなどは家族と共有ではなく、横着せずに男性用、特にスカルプケア専用の商品を使います。中でもミドル脂臭を抑制するのがカンゾウ、ケイヒ、ユキノシタなどフラボノイドを含む植物エキスが配合された商品です。フラボノイドには菌が乳酸を代謝してジアセチルを生成するまでのスピードを落とす効果があります。二度洗いで頭皮を健やかに保ち、余分な皮脂の残留を防ぎましょう。

ジアセチルの発するにおいは男性よりも女性の方が不快に感じるとの実験があります。ただでさえジアセチルが生み出すミドル脂臭は口臭や加齢臭より強烈と言われます。その上女性ウケも悪いとくれば、手を打たないわけにはいきません。もしも加齢臭にはまだ早いはずなのに家族の反応や自分のにおいに変化を感じることがあったら、思い切って後頭部のにおいを確認してみましょう。

まとめ

日本人は体のにおいに敏感です。自分自身の体臭はもちろん、他人のにおいにも神経質です。不快なにおいは「不潔」「不衛生」などのマイナス評価につながり、「体臭」という言葉にも良いイメージはありません。そんなお国柄ですから、自分のにおいが周囲に不快感を与えていないか、常に気を配るのがマナーです。汗や皮脂の発するにおいは日頃の生活スタイルの反映でもあります。清潔を心がけ、食事・運動・睡眠に気をつけて、体臭の悩みや不安から解放されましょう。